木賃アパート経営24時

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「昨晩、204号室のやつが女を連れ込んでいたぞ。単身用の契約なのに契約違反だろっ。管理会社ならちゃんと契約を守らせろよ!!」今朝も元気に管理会社にクレームをいれてくるおじさんがいる。
古いアパートに設備投資をしたら良かれと思って、奮発してモニター付きインターフォンを取り付けたところ、日がな一日モニターで他の入居者の出入りを監視するようになってしまった。何かあるとすぐに管理会社に激怒する。異性を連れ込むことに対しては、人一倍に敏感であった。おじさんの部屋が入居者全員が通る一階のはじっこなのもよくなかった。うちのアパートのちょっとした問題児だ。
異性を連れ込めなくて何のための一人暮らしかと思うのだけれど、契約違反だと毎回騒ぎ立てるし、他の入居者にそれを注意する手紙を勝手に管理会社名で作って投函したりして、もう大迷惑なので…やんわりと「うちのアパートは暮らしづらいだろうから、他のアパートへの引っ越しをしてはいかがでしょうか?」と、引っ越し費用負担で他のアパートに行ってくれないか提案したりするんだけれど「いや、まあ気に入ってるからいいよ。」と引っ越してくれない。もう25年住んでいる。

親切なアパートの隣家から連絡があって「おたくの入居者が電気を盗んでるわよ!」と言う。どれどれと現地を見に行くと、2階の窓の隙間から茶色い電気コードが伸びていて、延長コードに延長コードがたくさんつながって、最後はぼくの自動販売機のコンセントにつながっている。なんだこれ。
砂糖水でも売ってアパートの利回りを上げたろと思ったのに、妙に共用部の電気代がかかって赤字になっているのはこれか。立派な会社に勤めていらっしゃるのに、なんでそんなせこいことをするのかわからない。姿も形もない電気をどろぼうしても窃盗罪になるのかググったあと(なる。)、お巡りさんと一緒に現地確認をして厳重注意の後、自販機のコンセントカバーには南京錠をつけて暗証番号を0110にしておいた。
注意するだけの温情措置にしたのは入居者さんの将来もあるし、これで捕まったり仕事をクビになると大家の自分がただ困るだけというのもある。

火が消えた煙草をゴミ箱に捨てたらボヤになったという入居者さんもいた。なんでそんな危ないことをするのかわからない。現地確認に行くと真っ黒に煤けた靴箱を誤魔化そうと、一面に白い塗料をスプレーしていて、なんだか麿赤児の暗黒舞踏みたいだなぁ…と、あやうくぼくのアパートが燃えかけたことも忘れて、他人ごとのような感想を抱いたものだった。
火があれば水もある。ちゃんと掃除をしていないと洗濯パンの排水口が詰まってあふれて漏水する。階下の入居者のお兄さんに被害状況を確認すると、廊下に天井まで山積みしていたアイドルの写真集がびしょ濡れで、どれもプレミアがついていて、もう手に入らない。すごい損害が出ている。「お金の問題じゃなくて現物を返して欲しい。」と涙目で主張される。気持ちはわかる。すごいわかる。
いっそボヤの人と漏水の人でうまいこと打ち消し合って何もなかったことにはならないだろうか。

大家というのは人が生まれて、死んでいくスペースを貸す商売なので、こういった人が暮らしていく上で起こるトラブルを一通り経験することができる。
保有物件が12部屋あれば1年に1度のトラブルを毎月。120部屋あれば10年に1度のトラブルを毎月、そして100年に1度の大トラブルを毎年味わえる計算になる。漏水や害獣、滞納や夜逃げはもはや日常の一貫だ。
これが株式投資や仮想通貨とは違って、現物ならではの不動産投資の醍醐味だ。つらいと思う人と、やりがいを感じるという人がいる。(いない。)でも、今はお家賃のたった5%でぜんぶ管理会社さんが矢面に立って受け止めてくれる仕組みがある。大家に替わってトラブルに巻き込まれてくれる。

大家さんには自主管理派と管理委託派があって。片や管理費5%の節約になる。設備やリフォームを自分で手配した方が安くできるし、アパートの細かい不具合にもすぐ気が付ける。…と自主管理のメリットを説く。
一方、外注できる業務は外注して規模を大きくした方がいい。そもそもコミュニケーションや人付き合いが苦手だから投資で食ってこうとしてるんだ。と管理丸投げを正当化するタイプもいる。もちろん、ぼくは圧倒的に断トツに完璧に後者だ。この仕組みがなかったら今頃はストレスでとっくに不動産投資をやめていたと思う。
管理会社さん、いつもぼくのアパートと入居者さんのお世話をしてくれてありがとう。

 

(サムネデザイン:コスモオナン)

ABOUT US
どエンド君
専業の不動産投資家。お家賃とローン返済の隙間で暮らして10年ちょっと、だんだん社会人としての常識があやしくなってきました。借金5億円ほどの多重債務者でもあります。note始めました。↓