夏休みに実家のオカンと電話をしていて。「あんた仕事の調子はどうなの?」みたいなことを聞かれたので、うっかり素のまま「いやー、最近はすっかり暇でやることがないよ」と言ったものだから(※前回コラム参照) なにやら誤解を招いてしまい「あんたが大学生の時に毎月、家に入れてくれてたお金。あれぜんぶ通帳に貯めてあるからね。困ったらいつでも言うんだよ!」とえらい心配をされてしまった。
コツコツ毎月貯めてくれた300万円の通帳。いま背負っている5億円の借金の返済には焼け石に水なんだけどな…。年老いてなお、やみくもに子どもの心配をしてくれる親というのは有難いものですね。「大丈夫だから。それは旅行にでも行ってパーッと使ってきなよ」と伝えて電話を切ったあと、念のため”借金見込み先.xlsx”を開いて+300と一行追加して上書き保存した。
借金見込み先.xlsxってなんだよ。なんでぼくはこういつも借金をすることばかり考えてしまうのだろう。でもこれは、ぼくだけじゃなく不動産投資家はみんなそうだ。どこの銀行がいま出るとか、渋くなったとか、勢いよく出る担当者をみつけたとか。もはや出玉を追い求めるパチンコ狂みたいになっている。銀行に着ていく服装はスーツよりも作業着だと借りやすいとか。銀行では不動産投資とは絶対に言わずに、不動産賃貸事業と言おうとか。よくわからないジンクスまで発生していて、みんな何とか借金がしたくてたまらない。不動産投資のコンテンツでダントツの一番人気はいつも融資情報だ。
ぼくはいまでこそローンが26本。そろそろ毎日が返済日という立派な多重債務者だけれど、思えば初めて借金をしたときは不思議と後ろめたい気持ちがしたものだった。
銀行の会議室でうつむきがちに金銭消費貸借契約書に印鑑をつきながら「なるべく早く返しますね…」と、わけのわからないことをぼそりと口走り、銀行担当者に怪訝な顔をされたのを思い出す。
そりゃそうだろう。向こうも貸すのが商売で、頑張って稟議をあげ、承認をもらい、やっとこれから20年かけて貸出金利を受け取ることになったのに、それを早く返すと言われて嬉しいわけがない。
たくさんの不動産投資の本を読んで、頭ではレバレッジだ、CCRだ、IRRだと投資の仕組みを理解していたつもりだったけれど、それでも借金はお金が足りない時にすること。お金が足りないのは恥ずかしいこと。できるなら借金はせずに済ませるに越したことがない。そんな借金に対するマイナスのイメージがどうしても拭い切れず、まだ頭のどこかに残っていたのだ。
そんな負のイメージをいつどうやって払拭したのかもう思いだせない。いつの間にか借金と聞くだけで胸が高鳴り、融資承認の電話がかかってくると絶頂を迎え、金消のハンコを押すときにじんわりと幸せを感じる体になってしまった。たくさん借金しているやつほど戦闘力がすっげぇぞ!!!というドラゴンボールのようにシンプルな不動産世界観で暮らしている。
なんでそんなに借金が好きなのかと言えば、それはぶっちゃけ借金をすればするほど儲かるからだ。だいたい1億円の借金をして不動産投資につっこむと、都内なら年700~800万円くらいの売上になる。そこそこ出世した立派なおっさんくらいの年収だ。もちろん金利や経費なんかもかかるんだけれど、生身のおっさんだってご飯とか食べなきゃ働けないんだから、こまかいことはこの際おいておこう。
ともかく1億円の借金をすると見知らぬおっさんが1人現れて、自分のために365日働いて、食費やスーツ代を除いてあとの稼いできたお金をぜんぶ渡してくれるようなものなのだ。そんな素敵なこと、いままでの人生に起こったことあります?
一度これを味わうと、もっと…借金…もっと…おっさん…と借金中毒になって、残高が返済によって減ると、なんだか損しているような気さえしてくるし…10億、30億、100億とたくさん借りている先輩達がもう羨ましくてしょうがない。だって10人、30人、100人ものおっさん軍団が365日24時間自分のために働いてくれるのだ。ぼくには5人しかいないのに!ずるい!もっと借速を上げたい。借速って何かって?ググって。
…興奮しまして。失礼いたしました。
こうやって借金はうまく利用することで、本来ならできないことが身の丈を超えてどんどんできるようになります。
平民として生まれた者が、一人で働きながらコツコツと20年間、お金を貯めても1億円のビルを手に入れることは難しい。けれど借金をして先に1億円のビルを買ってから、そのお家賃を使って返済すると、わりと簡単に誰でも20年かければビルを手に入れることができます。なんだか借金って魔法のような、タイムマシンのような、不思議なツールだと思いませんか。
ともかくぼくはそんなわけで借金が大好きなのです。借金ももっとぼくのことを好きになってくれたらいいな。
※不動産投資にはリスクがあり、投資は自己責任です。お借入は計画的に。
(サムネデザイン:コスモオナン)