「積み木を使ったパフォーマンスショーがある」
子どもが生まれてから積み木と出会い(前回記事)、自由な発想で遊べる魅力にのめりこみました。積み木の良さを教えてくれたお店、静岡県静岡市にある絵本とおもちゃの専門店「百町森」では、定期的に積み木ショーを開催していて、いつか行きたい…!と長年憧れていました。
2018年1月、思いつきと勢いで、当時暮らしていた横浜から3人の子どもを連れ、弾丸日帰りで行ってきました。半日お店で過ごしたなかで子どもたちのこれまで見たことない一面と出会ったのです。
リュックに積み木を入れて、静岡へ出発
「積み木ショー???」
初めて聞く方には想像がつかないですよね。私の子育てバイブルとなっているコミックエッセイ本「好きッ!絵本とおもちゃの日々(エイデル研究所)」の著者で、おもちゃデザイナーの相沢康夫さん。「百町森」の元店員で、漫画家で、世界的に知られるスイスの木製玩具メーカー、Naef(ネフ社)を愛しすぎてデザイナーにまでなった方です。
「積み木ショー」は、「積み木おじさん」とも名乗る相沢康夫さんによる、積み木を使ったパフォーマンスショーのこと。幾何学的な積み木をどんどん組み替えていくパフォーマンスを目の前で見られます。(2021年現在はオンラインで積み木ショーを行っています。)
当時7.5.2歳だった子どもたちに出かけることを伝えると大喜び。
準備をしていると、7歳長男がリュックに積み木を入れようとしていました。直前のクリスマスに、サンタさんから相沢康夫さんデザインの「ハニカム(ジーナ社)」をもらっていたのです。
「え、積み木持っていくの?それ、どうするの???」
「相沢さんに見せたい」
無垢な目を輝かせている長男。よく考えたら持っていったらダメな理由もないのかも。止めるのも野暮ってものかという気がして、本人に任せることにしました。
「絵本とおもちゃでゆっくりと」思いあふれるお店
横浜から静岡へ。車で3時間の道中はスムーズに進み、お昼過ぎにお店へ着きました。伺ったのは2回目でしたが、1回目は30分ほどの滞在だったため改めて聖地に足を踏み入れる心境で店内へ……。
天井まで並ぶ絵本や児童書、大人向けの育児書などの書籍が視界に飛びこんできます。おもちゃやボードゲームもところせましと並びます。
子どもたちはそれぞれ本棚へ向かったり、積み木やおままごとで遊んだり、すぐに店内を見てまわり始めました。なかなか実物を目にすることのない、木のおもちゃやドールハウス、天井から下がるモビール、工作やお絵描きの画材、子ども用の食器などに心躍ります…!子どもにとって遊びとは?おもちゃとは?良いものとは?並ぶ商品すべてに物語があるように感じます。
さらにお店には、有料の遊び場「プレイオン」が併設されていて、お店にあるおもちゃでじっくりと遊べます。(2021年現在、コロナウィルスの影響で閉められています。)
「相沢康夫さんの積み木ショー」本気で遊ぶ大人を見る
店内でひと遊びしてから、積み木ショーの会場へ向かいました。定員は50名。参加者との距離がとても近いです。
いよいよ相沢康夫さんが登場し、積み木ショーが始まりました!ネフ社をはじめとした色鮮やかな積み木が、魔法のようにどんどん姿を変えていきます。
「ここにこれ乗せられるかな?」
「そーっとそーっと……あ!崩れたー!!!」
「ここにこれは乗らないと思うでしょ?それが乗るんだなあ〜。」
相沢さんのひょうひょうとした漫談のような語り口調に、大人も子どもも引き込まれています。一緒に積み木を積んでいるような、ハラハラしたりワクワクしたりの1時間。
ショーを楽しんでいると、私の前に座っていた長男がおもむろに持参した積み木「ハニカム」をリュックから取り出そうとしているのが見えました。
「え??ショーの最中に積み木出そうとしてる???」
「わ!となりの赤ちゃんが触りたがってる!しまいなよ!」
内心焦りながら止めようとすると、
「えっ、それ自分のハニカム?マイハニカムなの?」
なんと相沢さんが長男に声をかけてくれました。
「うん!サンタさんからもらった」
「わざわざ持ってきたの?じゃあそれ使おうか。貸してくれる?」
長男が持参したハニカムを、相沢さんがショーで使ってくれたのです。長年著書を読んでいた私は、懐の深さに感激しながら眺めていました。家に帰ってから、子どもたちは「積み木ショーごっこ」をしていました。相沢さんのショーを見ているとすごく簡単に積んでいるように見えますが、すぐに崩れてしまいなかなか同じようにはできません。
お年玉で子どもたちが選んだもの
この日は、もう一つ目的がありました。百町森へ入るとき、長男と次男に「お年玉で好きなものを買って良いよ」と伝えてみたのです。
まず動いたのは次男。お店に入って10分で、「こびと大図鑑(なばたとしたか作)」をお買い上げ。さらに10分ほどで「これにする」とドスンドスンとレジに出したのは、1935年創業、ドイツのメーカー「シュライヒ」のしっかりと重みのあるフィギュア2体でした。あまりの買い物のスピード感に、店主の柿田さんにも「良いね〜」と笑顔で声をかけられていました。
一方、長男は店内をじっくり見て周り、「あとで決める」と積み木ショーへ向かいました。
ショーが終わり、店内やプレイオンで遊び、気づけば閉店15分前。悩んで考えて長男が選んだのは、カードゲームのUNOと、ビー玉でした。値段にして、次男の1/5ほどです。
「えっ!もっと色々な積み木とか選んでも良いんだよ…!?」
「ここでしか買えないようなものにしたら???」
あれこれ言いたくなりながらも、選んだものに口を出さない!と決めていたのでぐっとこらえました。あまりに対照的な2人の買い物の仕方はとても興味深いものでした。
もう一つ「みんなで遊べるかな?」と、私が選んだのはこちらの「ままごと用シート」と「ままごと用スティック」。一見、「これなあに?」と思うようなおもちゃですが、すごいんです!
翌日、家のおままごとキッチンに置いておくと、「はい、ご飯ができたよ〜」次男がご飯を盛りつけていました。
シンプルな布にボタンがついていて、オムレツや卵焼き、クレープなど不思議と食べ物に見えてきます。おままごとをするとき、こういったシートや、写真の左下のチェーンリングなど、見立てやすい材料があると、子どもたちは長時間ごっこ遊びの世界に夢中になります。
「自分で選ぶ」経験がもたらしたもの
次男が選んだ「こびと大図鑑」は、昆虫や魚、鳥、さらには鉱物まで、自然の中のものに潜んで生きるこびとの生態が描かれたシリーズです。まるで本物の図鑑のような解説や分類が書かれ、「こびとの飼い方」まで紹介されている遊び心たっぷりの本。この本をきっかけに、息子たちのこびとを探す日々が始まりました。
さらに次男は、本を見ながら夢中でこびとの絵を描き始めました。アイロンビーズや工作でこびとを作り、生まれて初めての絵本まで作りました。ひらがなを時間をかけて書く姿に「好き」の気持ちから出てくる集中力に驚きました。
作った絵本を幼稚園に持っていくと、先生がみんなに見せてくれ、クラスの中で絵本作りがブームになり「こびと博士!」と呼ばれるほどに。赤ちゃんの頃にできることが一つずつ増えていったときのような、小さな感動をもらいました。
そして、2019年の夏にも積み木ショーを見にお店へ行きました。3歳になった末娘のショーへの反応が大きく変わっていたり、長男は前回と同じおもちゃで黙々と遊び「これが好きなんだ」と気付いたり、新鮮な発見がありました。
ヨーロッパのおもちゃは、長い間作られているものが多く、絵本も「ロングセラーがベストセラー」と言われるほど、長く愛されているものが多くあります。新商品ももちろん扱いながらも、こういった変わらない商品を多く扱うお店だから、子どもの変化や成長がくっきりと見えるように思います。人見知りがちな私もようやく、勇気を出してスタッフさんたちとゆっくりお話ができました。母も少しずつ成長…?
2021年、10.8.5歳になった子どもたちはマンガに夢中で積み木やおもちゃにさわる時間は減っています。それでも、次はいつお店へ行けるかなあと思いながらこういう記事を書いていると、子どもたちがふいに積み木で何か作っていたりします。私も家にあるおもちゃに触れると、やわやかい気持ちになり、お店のことや子どもたちとの遊びの記憶を思い出すのです。
「相沢康夫 TOYちゃんねる」
積み木ショーを行う相沢康夫さんのYouTubeチャンネル。色々なおもちゃを遊びながら解説していて、角度やパーツなど細かいところに感激している相沢さんのオタクっぽい目線にニンマリとして見ています。
「子どもの本とおもちゃ 百町森」
〒420-0839静岡県静岡市葵区鷹匠1-14-12 ウインドリッヂ1F
営業時間:10:30-18:00/定休日:月・火
新型コロナウィルスの感染対策をしながら、営業中です。
「0歳から幼児までの 絵本とおもちゃでゆっくり子育て(柿田友広/マイルスタッフ)」
現在コロナ禍でお店へ足を運んでおもちゃ選びをするのもなかなか難しい状況。おもちゃや絵本選びにおすすめの1冊です。
主に乳児期の成長時のポイントや、イヤイヤ期の乗り切り方、幼児期の遊びの膨らめ方など、子どもの発達の時期に、大人がどんな手助けができるのか、その時期にどんな絵本を読んでやるといいか、どういうおもちゃが遊びを豊かにできるのか…など綴っています。締めとして、小学校へ入るための準備として必要な考えも書いています。(公式HPより引用)