ローカルチェーンは、いい。
おいしさもあって、めずらしさもある。
住んで食べて良し、行って食べて良し。
地元の人に愛されてるだけあって、ハズレがない。
九州、東北、関西、関東とうつり住んでいくうちに、こんな考えを持つようになりました。
いま自分は群馬に住んでいるのですが、地元の人に愛されているローカルチェーンがあります。
それが、
です。
群馬を中心に32店舗展開しているお弁当のチェーン店になります。
また、登利平のメニューで代表的なのが、
この「鳥めし竹」という弁当です。
鶏むね肉のスライスをまんべんなくご飯にのせたのが特徴です。
たまに友人が群馬まで遊びにくるのですが、僕の家に泊まることが多く、そんな時にこの「鳥めし竹」を出しています。
ただ、登利平にはこの「鳥めし竹」を含めて、全部で17メニューあります。
そんな17メニューの中で、はたしてこの定番の弁当が他県からきた人にとって、本当にいい弁当なのか、疑問に思うことがありました。
きっかけは高校からの友人との電話です。
電話をしている時に、
「今度、そっちに遊びに行く」
「その時に、群馬っぽいものを食べたい」
と言われたので、登利平のこの弁当を教えたところ、「このお店、メニューがいっぱいあるけど、他のメニューはどうなの?」と質問を受けました。
「ほとんど食べたことがないけど、これが定番だよ」
「群馬人はこればかり食べてるよ」
そもそも僕は群馬の出身でもないので、他のメニューのことは知りません。
なのでほかの群馬の人がよく食べる、話題にしているものを定番と返したところ、
「そもそも定番が1番いいの?」
とまた質問されました。
これを聞いて、「まあ、たしかになあ」と思いました。
これまで定番のものがいいと思ってましたが、もしかするともっといいメニューがあるかもしれない。
「1回、ちゃんと比較した方がいいかも」
こう返事をしたところ、
「ちゃんと俺に合って、かつ群馬っぽいものを選んでよ。せっかく行くんだから」
と、ちょっと偉そうな感じで返されました。
言い方は気に入りませんが、まあ言いたいことは理解できます。
「旅行に行くのであれば、おいしいものが食べたい」、それはその通りです。
こんなやり取りをしたことがきっかけで、いちど登利平のすべてのメニューを食べた方がいいなと思うようになりました。
ということで、登利平の弁当のメニューをすべて食べて、どのメニューが他県から遊びにくる友人におすすめできるのか選ぼうと思います。
・判断基準は、以下の2点。
- ご当地の味が楽しめるか(友人の要望)
- 友人に合うかどうか(僕の勝手な友人像)
5点満点でレビューしていきます。
目次
1. 鳥めし竹弁当 730円
うすくスライスされたむね肉はパサパサ感もなく、しょうゆベースのタレとよく絡んでおいしい。
他ではあまり見られない弁当で、ご当地感も高い。
群馬の人は部活だったり、家庭だったり、色々なイベントでこの弁当を食べるらしく、「鳥めし竹」の話になるとうれしそうに早口で語ってくる。
会社で雑談していてこの話題が出ると、わらわらと人が集まってきて、どんどん会話の輪が大きくなり、1時間くらいは会話が続く。
もちろん、その間、業務は止まってしまう。
なんとも困った愛され弁当だ。
おすすめ度 ★★★
2. 鳥めし松弁当 830円
「鳥めし竹」がグレードアップした弁当。
もも肉の炭火焼が追加されている。
もも肉はしまりとやわらかさが両立していて、デパ地下のお惣菜のような上品さがある。
群馬の人はあまり「鳥めし松」の話をしない。
たぶん「鳥めし竹」をたくさん食べてきたからだと思うが、「鳥めし松」が好きと言うと、「ふーむ、ちょっと違うんだよな」という反応をされることが多い。
なので、この弁当を好きと大きい声では言いにくい。
ただ、個人的には「鳥めし松」の方が好きだ。
だって、メインディッシュが2つもある。
むね肉ともも肉。
これは、ファミレスのハンバーグにカットステーキがついてくるのと同じだ。
かなり、うれしい。
おすすめ度 ★★★★
3. 上州麦豚 炙り焼き弁当 830円
タレを絡ませた豚肉をご飯にのせた弁当。
豚肉には「上州麦豚」が使用されている。
上州麦豚は、ほどよくやわらかく、ほどよくあっさりしているのが特徴だ。
口でとけてなくなるような分かりやすい豚肉ではないが、食べるとじんわりと口に旨味が広がっていく豚肉で、地味にレベルは高い。
この弁当では、豚肉の味の奥深さとしょうゆベースのタレが見事に調和している。
ただ、見た目は豚丼なので、ご当地感はうすい。
どちらかと言うと群馬に住んでいる人におすすめしたい弁当である。
おすすめ度 ★★★
4. ソースカツ弁当 880円
ソースカツをご飯にのっけた群馬系のソースカツ丼。
キャベツは入っていない。
ソースカツ丼では、トンカツを使用するのがスタンダードだが、登利平ではチキンカツを使用している。
ソースはトンカツソースのようなねっとり系ではなく、ウスターソースのようなさらさら系。
あっさりしたむね肉のカツが、さらさらとした醬油ベースのタレと合わさることで、絶妙なハーモニーを奏でている。
メニューのご当地感も強く、弁当としてのレベルも高い。
この弁当は、誰にでもおすすめできる。
国民みんなに食べてほしい。
おすすめ度 ★★★★★
5. 特選ソースかつ弁当 950円
見た目は「ソースかつ弁当」とまったく同じだが、このお弁当では、ソースカツに鶏のもも肉が使用されている。
もも肉なだけあって、むね肉のチキンカツよりもこってりしている。
食べてみると肉汁が口の中に広がっていくのが分かる。
個人的にはかなり好きな味だ。
ただ、もも肉のこってりさが気になる。肉の主張がすこしつよい。
体型の大きい人であれば、気に入るとは思う。
ちょっと、これを見てほしい。
これは弁当を包んでいる紙なのだけど、このおっさんのように大きい人であれば、この弁当を気に入ると思う。
でも遊びにくる友人の体型はおっさんの2/3くらいの大きさだ。
それほど大きくはない。
それにしてもこのおっさん、けだるそうに弁当を持っていて登利平の上客っぽいオーラがある。
カツの揚げ具合に注文とかつけてきそうだ。
おすすめ度 ★★
6. 鳥串弁当 880円
焼き鳥を3本分、ご飯にのっけた弁当だ。
この弁当、めちゃくちゃにうまい。完全に好みだ。
ひと口サイズのもも肉もやわらかくてうまい。
ただ、それよりもネギ。ネギがべらぼうにうまい。
タレがネギの甘さを引き立てていて、ネクストレベルのネギになっている。マジでうまい。
とはいっても、ご当地感という部分でインパクトがよわい。
ところで、またで申し訳ないのだけど、このお弁当の包装紙を見てほしい。
このおっさん、はだかで鳥を焼いている。
どうやら店員だったようだ。
調べてみたところ、「へいどん」という名前があるのが分かった。
登利平は2020年に公式ツイッターを始めたのだけど、その時、マスコットキャラクターとして採用され、「へいどん」という名前がつけられたらしい。
語尾に「~じゃ」とつけて、ツイッターに投稿している。
いかにも職人っぽい。
おすすめ度 ★★★
↓株式会社登利平【公式】さんはTwitterを使っています
-ˏ` へいどんじゃˎ´-
数十年間、お弁当の包装紙に描いてある
''おじさん''としか知られていなかったようじゃが
最近、色々な人が『へいどん』と呼んでくれて本当に本当に嬉しいのぉ。これからも、様々な情報を発信するのでよろしく頼むぞ。 pic.twitter.com/H4bhx9C3Sg
— 株式会社登利平【公式】 (@torihei_cp) February 11, 2021
7. うなぎ弁当 1700円
いわゆるうな重。
うなぎはふっくらとしていて、さらさらしたタレが旨味をさらに引き立ててくれている。
高級感もあっておいしいけど、群馬っぽさはなく、遊びにくる友人向けではない。
ところで、またまたで申し訳ないのだけど、ちょっとこの包装紙を見てほしい。
へいどんが2人になっている。
まさかの双子か?
まったく分からない。
そもそもなぜ登利平はへいどんというおっさんをマスコットにしたのか。
福の神なのだろうか。
気になったので、理由を登利平に問い合わせてみたのだが、よく分からなかった。
ただ昔からいるらしい。うーん、謎である。
おすすめ度 ★★
8. うなとり弁当 2100円
うなぎ、むね肉スライスのハーフ&ハーフ。
なんとも贅沢感のある弁当だ。
まったく種類の違うものを組み合わせているが、同じソースを使っているおかげか、弁当に統一感がある。2つのおかずを別々に食べてる感じはない。
1つの弁当として完成されていてすばらしい。
ただ、包装紙を見ると、
このうなとり弁当、超デカうなぎを使用しているのが分かる。
全長5メートルは越えそうで、神の化身っぽい。
食べる前に心からのいただきますを捧げないと祟られそうな気がする。
祟りはこわい。
ひとりで心からのいただきますを捧げられる時だけ食べた方がよさそうだ。
友人へのおススメ度 ★
9. から揚げ弁当 880円
から揚げ……、としか言いようがない。
醬油ベースの下味がしっかりついていて、パンチのある味がする。
ビールを飲みたくなるような味だ。
ただ、どうしても、ご当地感はうすい。
から揚げなので。
から揚げといえば、今度あそびにくる友人の古賀だ。
古賀はから揚げが大好きだった。
高校の頃、始業前に食堂でパックに入ったから揚げをテイクアウトして、2限目が終わったタイミングで食べていた。
おやつ代わりのから揚げ。
他の人はパンも食べたりしていただけど、古賀はかから揚げしか食べなかった。
理由を尋ねたこともあるが、「だっておいしい」としか言わなかった。
ある日の2限の終わり。
友人たちと古賀の机を囲んで話をしていたところ、いつものように古賀がから揚げをバッグから取りだした。
それを見た友人のひとりが、「本当あきないよな」とあきれたような声で言った。
続けて他の友人が「毎日から揚げって、常時チキンを食べてるってことじゃん」、「つまりはチキンジョージ博士だ」とニヤニヤしながら言った。
ブホホッとみんな吹き出した。
古賀は「やめろよー」と言いながらも、ニコニコしていてまんざらでもない様子だった。
古賀はチキンジョージ博士になった。
ご当地度はうすいものの、から揚げは古賀の好物なので、おすすめ度は高い。
おすすめ度 ★★★★
10. 鳥追い弁当 880円
鶏むね肉のカツとご飯のゾーンが区分けされている弁当。
ソースを自分でかけることができるので、味の濃さを自分好みに調節できる。
チキンカツは、あっさりしつつも柔らかく、マイルドな味である。
ひとつ気になるのが、「鳥追い」という弁当の名前、いや、「追」という漢字だ。
高校生の頃にあった追試を思い出してしまう。
古賀がチキンジョージ博士となって、2か月ほどたった頃。
理系科目が苦手な古賀は、化学で追試を受けることになった。
ある日、「追試の勉強がめんどくせー」っと文句を言う古賀を見て、友人のひとりが、「追試になるくらい勉強ができないのは、博士という名前に失礼じゃないか」と言い出した。
チキンジョージ博士というあだ名の面白さがうすれ、飽きていた僕たちは、「そうだ、そうだ」と乗っかった。
続けて他の友人が、
「もう今日からお前はただの古賀だ」と
ぐぐもった低く渋い声でカッコつけるように言った。
古賀は大げさに口唇をつきだし、納得してない感を出した。
いわゆるツッコミ待ちだが、だれも反応しなかった。
古賀はキョロキョロしてみんなの反応を確認すると、口と目をすこしずつ歪ませていって、ひょっとこみたいな顔をした。
ウケを取ろうとしたのだ。まったくおもしろくなかった。
チキンジョージ博士は、古賀に戻った。
鳥追いという言葉から残念な記憶を呼び起こすかもしれないので、古賀にはあまりおすすめできない。
友人へのおススメ度 ★
11. 幕の内弁当① 730円
登利平の幕の内弁当には4グレードある。
その中でも1番価格の安い、幕の内弁当だ。
エビフライ、シャケ、鶏の照り焼き、玉子焼き、煮物……。
おかずにバラエティーがある。
出張で会議をした後にこういう弁当がでてくるとうれしい。
とは言っても、幕の内弁当なのでご当地感はうすい。
友人へのおススメ度 ★★
12. 幕の内弁当② 1000円
幕の内弁当のレベル2。
俵のご飯、チーズを包んだカツ、エビのフリッター。
幕の内弁当マークⅡだけあって、ちょっと手の込んだ料理が増えている。
ただ弁当としてはすばらしいものの、群馬っぽさが足りない。
そういえば高校の修学旅行の時にも、ちょっと手の込んだ幕の内弁当が出たことがあった。
移動している間にお昼になるということで、車内で弁当を食べることになったのだ。
バスに揺られながら、モグモグとたのしいひと時をすごしていたのだけど、幕の内弁当に納得しない古賀がぼそぼそと文句を言い出したのである。
「メインのお肉がドンとある弁当の方がいい」
から揚げばかり食べている古賀からすると、おそらく好きなものだけ食べたかったのだろう。
たしかに年頃の高校生からすると、肉のすくない幕の内弁当はちょっと物足りない感じがある。
それこそ、から揚げ弁当、トンカツ弁当もしくは牛丼みたいな分かりやすい食べ物がうれしい。
まあでもそこは就学旅行だ。いつもと違う弁当を食べてもいいんじゃないかと思った。
古賀は、まわりから「お肉どっさり弁当は帰ってから食え!!」とつっこまれていた。
友人へのおススメ度 ★★
13. 幕の内弁当③ 1300円
幕の内弁当のレベル3。
有頭エビがあるし、揚げ物も増えている。
かなりのゴージャス弁当だ。品目が多い。
古賀は社会人になってから食べ物への考えが変わった。
「品目の多い食事はいいもんだ」と言うようになった。
社会人デビューに成功して人生ではじめての彼女ができた影響だ。
ことあるごとに嬉しそうにはじめての経験をよく語っていたのだけど、食事についてのトークはその中でも多かった。
「やっぱりパスタは生パスタだよな」
「パエリアはやっぱうめーな」
おしゃれな店に恋人と行くようになった影響か、こんなことをよく語ってきた。ちょっとウザかった。
そんな有頂天ホテルな古賀はいい和食屋に行ってからというもの、「品目が多いと、豪華さだよな」、「仕込みも料理の手間もかかるんだよな」と言うようになった。
世界が広がって、食への認識が変わったみたいだった。
友人へのおススメ度 ★★
14. 幕の内弁当④ 1800円
肉の幸、海の幸、あれやこれやてんこ盛り。
から揚げ、メンチカツ、ホタテ、有頭エビ、果物……、豪勢すぎる。
登利平でいちばんの幕の内弁当なだけあって、懐石料理みたいだ。
ただ、やっぱり、ご当地感はうすい。
古賀ははじめての彼女とほどなくして結婚したのだけど、結婚式の食事もこの弁当のようになかなかに豪勢だった。
高そうな肉が2種類、さらに魚も出てきて、ケーキバイキングもあった。
はじめての友人の結婚式で当時はよく分からなかったけど、あれは結構なオプション料金がかかっている。
おそらく古賀なりの気づかいだったのだろう。
食事については自身の考えをつらぬくだけだった古賀も、いろんな人と出会うことで考えが変わった。
友人へのおススメ度 ★★
15. 三山(みやま)弁当 1200円
四角いお重形の弁当だ。
焼き鳥、から揚げ、野菜なし。
高校生の古賀だったらよろこんで食べた弁当だろう。
なかなか、とがっている。
あれから数年が経って、この包装紙のように、僕も古賀も自分のまわりに世界ができた。
結婚して、親になり、会社の名刺には意味があるのかよく分からないような役職もついた。
自分のまわりの世界を維持するのは時間も労力もいるもので、いまや古賀と会うのも数年に1回だ。
なかなか時間を作ることができないし、連絡を取るのも1年に1回あればいい方である。
おすすめ度 ★★★
16. 上州(じょうしゅう)弁当 2300円
見た目が、茶色い。
三山弁当と比べて、煮物と果物がふえたものの、全体として肉々しい。
個々のおかずに群馬っぽさはないけど、とにかく弁当としてとがっている。
この弁当のとがり方を見ていると、あの頃とがっていた古賀、そしてあの頃の小さな輪だけで回っていた世界を思いだしてなつかしい気持ちになる。
それはあの頃の小さな輪が心のふるさとになっているからなんだと思う。
あの頃、小さな輪で回っていた世界はもう存在しない。
大人になるにつれて輪がどんどん広がっていってしまったからだ。
輪が大きくなるにつれて、人との付き合い方、自分との付き合い方も変わっていき、輪が小さかった頃の自分もいなくなってしまった。
でもあの頃の残骸はまだ心に残っている。
だからこそ、とがっているものを見ると、あの頃の心のかけらが反応して、なつかしくなるのだと思う。
そのなつかしさは、自分にとってのふるさとと言うべきもので、たまに帰りたくなるものだ。
だから今でも古賀との交友関係は続いているし、これからも続いていくのだと思う。
おすすめ度 ★★★
17. 御用弁当 3200円
まさかの、うなぎ、追加。
登利平のもつ総力を駆使して、こってりにきている。
個々のおかずに群馬っぽさはないけど、本当にすごい。
とがりを削ぐのではなく、さらにとがらせる方に進んでいる。
このとがり方、ローカルチェーンでしかできないと思う。
さすがとしか言いようがない。
ローカルチェーンの魅力は、こういったとがりにある。
それは全国まで輪を広げていないから残せる味なのだろう。
とがりが残っていて均質化されていないからこそ、心が惹かれるのだと思う
友人へのおススメ度 ★★★
友人と食べる1品は……
これで登利平の18メニュー、すべてを食べ終えたので、こんど古賀が遊びにきた時に食べる弁当を決めたい。
それは、
ソースカツ弁当です。
決め手は、ソースカツ丼というご当地感、弁当としての完成度の高さ。
そして、あの頃、古賀が好きだったお肉弁当、だからである。
古賀に会うのは4年ぶりだ。楽しみにその日を待ちたい。