最近、とある店が赤羽界隈で話題になっている。店の名前は「赤バルRETZE(レッツェ) 赤羽店」。赤羽らしからぬヨーロピアンな雰囲気を漂わせたイタリアンバルだ。
石窯で焼く本格ピザや樽生のクラフトビールが楽しめるとあって、多くの飲食店が立ち並ぶ赤羽の中でも人気店として知られている。
どうやら、その赤バルRETZE 赤羽店が販売している「王様のたまごパン」というメニューが評判を呼んでいるらしい。SNSでは「赤羽の新名物だ!」なんて声も見かける。
そんな王様のたまごパンは、今年3月の発売以来、順調に販売数を伸ばしているという。いったいどれだけの人気を得ているのだろう?また、赤羽の新名物とも呼ばれるほどのメニューは、どのようにして誕生したのか。
今回は、赤バルRETZE 赤羽店の営業部長・寄木一真さんに話をうかがった。
目次
3ヶ月で販売数2000本超!プロレスファンにも人気
――「赤羽に新名物が誕生した!」とSNSで評判ですね。月に1000本も売り上げたとか。
ありがとうございます。今年の3月に発売して、初月は販売数1000本を超えました。発売から3ヶ月が経過し、現在は販売数2000本を超えたところです。
――もう2000本超え!それはすごいです。反響はいかがですか?
男女問わず、幅広い年代のお客さまから「とてもおいしいです」「やみつきになります」と言っていただけて。予想以上に反響があったので、とてもうれしいですね。リピーターになってくれる方もたくさんいます。
――赤羽に住んでいるお客さんが多いのでは?
そうですね。地元の赤羽のお客さまや、あとはプロレスファンのお客さまも多いです。
――えっ!?プロレスファンの方が来るんですか?
はい。実は5月に、「プロレスリング・ノア」というプロレス団体の試合に広告を出させていただきました。ありがたいことに、試合中にたくさん広告が映ったんです。
その反響が大きくて、王様のたまごパンを買いに来た方に「ノアの試合に映っていましたよね」と声をかけていただきます。
――なるほど。しかしなぜ、ノアの試合に広告を出すことに?
2018年頃から、ノアの選手がお店に足を運んでくれているんです。大のプロレスファンである私がたまたま赤羽で選手を見かけて、お店に引き入れたのがきっかけで(笑)。それ以降、選手といい関係を築いています。
そんな中で、ノアさんが広告の募集をされていたので、社長の許可を得て広告を出しました。
――そういう経緯があったんですね。ということは、ノアの選手も王様のたまごパンを食べているんですか?
はい。ノアの選手がお店で召し上がってくれて、ツイッターにも投稿してくれていました。それが本当にうれしかったですね。
スタッフ全員で生み出した「卵×トリュフ×チーズ」の組み合わせ
――プロレスラーのお墨付きですね(笑)。ずばり、人気の秘密はどこにあるんでしょう?
味の劣化を少なくしていることですね。テイクアウトをする方が多いので、持ち帰ったときに焼きたてのパンの食感を損なわないよう、パンの包み方やパッケージングの仕方も工夫しています。
――確かに、パンのテイクアウトは固くなってしまうのが気になります……。
そうですよね。だから使用するパンにもかなりこだわっています。全粒粉のカスクードというパンを使用することで、程よく柔らかい食感になるようにしています。
――パンに挟んでいる卵には、何を使っているんですか?
卵黄の味が濃い、ブランド卵を使用しています。そこにトリュフとチーズを混ぜ合わせることで、ふわふわな食感と香ばしい味わいを楽しめるようになっています。
――卵、トリュフ、チーズの組み合わせが魅力的です。
試作のときは、エビを入れてみたり、野菜中心の具材にしてみたり、試行錯誤したんですよ。スタッフ全員で意見を交換して、卵、トリュフ、チーズの組み合わせが一番おいしいという結論になりました。
――スタッフ全員が試作に参加したんですか?
はい。うちのお店はいつもスタッフ全員で意見を出し合って、試作を重ねながらメニューをつくっています。
だから今回も、スタッフ全員で王様のたまごパンを考えました。若い子の意見や感覚も取り入れながら、みんなの知恵が詰まった思い入れのある商品をつくり出せたと思います。
――店の総力を挙げてつくられた、と。
そうです。屋台でトリュフとチーズを絡ませて、パフォーマンスを見せながら販売するスタイルも、スタッフから出た意見です。
王様のたまごパンというネーミングも、若い女性スタッフが考えてくれたんですよ。
――そうだったんですか!インパクトのあるネーミングですよね。ちなみに、かわいらしいキャラクターはどなたが考えたんですか?
王様がチーズのお風呂に入っているイメージを考えたのは私です。そのイメージを、プロレスファン仲間でデザイナーの連れてってくれ1000円さん(@shun064)に表現してもらいました。
実際に注文して食べてみると…
筆者は王様のたまごパンを注文して、寄木さんが説明してくれた”こだわり”を実際に味わってみた。
パンが出てきた瞬間、芳醇な香りが鼻腔に抜けて、空腹感を刺激した。カスクードの間には、スクランブルエッグがたっぷりと挟まれている。
食べてみると、スクランブルエッグの食感がふわとろっ!!トリュフの香ばしさとチーズの濃厚な味わいが、口の中でどんどん広がっていく。上品な風味を堪能していると、ヨーロッパの王様にでもなったかのような気分。
さらに、パンの柔らかさが絶妙である。食べ進めるのにちょうどよい噛み応えで、あっという間に完食。これはおいしい。あまりにおいしかったので、テイクアウト用にもうひとつ注文してしまった。
自宅で食べたときは提供から30分以上が経過していたが、パンの固さを感じることはなく、焼きたてのときと同じようにおいしかった。これなら、テイクアウトで人気を得ているのも納得だ。
”ニューノーマル”を見据えたブランディング
――ごちそうさまでした。とてもおいしかったです。実際に食べてみて、食材や調理方法へのこだわりを感じました。完成するまでに時間がかかったんじゃないですか?
王様のたまごパンは、2ヶ月ほどで販売までたどり着きました。
――たった2ヶ月!かなり早い印象です。
今年の1月に緊急事態宣言が発令されたとき、お店を休業したんです。でも週に1度はスタッフが集まって、「お店のブランド力を底上げできるようなものを、みんなでゼロからつくり出そう」と意見交換をしていました。
だからスタッフには、休んでいる時間を無駄にせず、次の一手を考えるように伝えていましたね。
――なるほど。だから急ピッチでメニューの開発を進められたんですね。
そうですね。実は去年の4月に緊急事態宣言が出たときは、ただ休むだけの無駄な時間を過ごしてしまったんです。こんなにコロナが長引くと思っていなかったので。
でも今回は同じ過ちを犯したくないと思ったので、次の展開を考えられるように休業期間をきちんと利用しました。
――新しい商品を考えるうえで、何を重視しましたか?
テイクアウトの需要が高まっていることも考えて、商品の打ち出し方を重視しました。緊急事態宣言下をしのぐための商品ではなく、長期的に見てお店の新しいブランドになるような商品を開発しようと思いました。
――お店の新しいブランド。
はい。一番こだわったのは、ブランディングの部分です。4月には「王様のランプレドット」というセカンドブランドもつくりました。王様のランプレドットは、何時間も煮込んで柔らかくなったギアラ(牛の第4胃)と野菜をカスクードに挟んで、バジルソースを混ぜて提供しています(※)。
いまの王様のたまごパンも完成形というわけではなく、これからブランド力を上げるために改良を重ねて、さらにおいしくしていきたいと思っています。
※王様のランプレドットは現在販売休止中。
――先を見据えて動かれているんですね。
もしコロナが落ち着いたとしても、以前とまったく同じように営業できるとは思っていないんですよね。生活様式が変わってしまったので、飲食店はこれからどう対応していくかというのが大きなテーマだと思います。
それにいち早く対応して人気を集めているお店はたくさんあるので、うちも学べる部分はしっかり学んで、そこに追いつきたいと思います。そのために動いている最中ではありますね。
――さらに新しい展開も考えているんですか?
今後、フランチャイズ展開や全国デリバリー、通販などで王様のたまごパンのブランドを広げていきたいと考えています。今までやっていなかったところを攻めて、多角経営ができるようになりたいです。
そのためにもまずは、王様のたまごパンというブランドを、皆さんにもっと認知してもらいたいですね。
――王様のたまごパンの人気が全国区になるといいですね!寄木さん、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
(写真提供:赤バルRETZE 赤羽店)
【赤バルRETZE 赤羽店 基本情報】
〇営業日時
・月~金 ディナー 16:00~23:30(L.O.22:30、ドリンクL.O.23:00)
・土・日・祝 ディナー 13:00~23:30(L.O.22:30、ドリンクL.O.23:00)
〇住所:東京都北区赤羽1-12-4
〇電話:050-5487-2904
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業時間が記載と異なる場合があります。ツイッターや電話で事前にご確認ください。