今年はお子さんを持つご家庭にとってなかなか大変な夏休みだったと思います。お出掛けも気軽に出来ず、家でゲームばかりしている子供をみてモヤモヤとしていた親御さんも多かったんじゃないでしょうか?
現代の子育てにおいて多くの人がぶち当たるゲーム問題。
私は小学校教諭をやっているので職業柄、『ゲームとどう付き合っていいのか?』という相談されることが度々あります。先日パパ友と子供のゲーム問題についてやり取りをする機会がありました。その時の会話を振り返りながら、子供のゲーム依存問題について考えていきます。
目次
ゲーム依存症が怖い!息子がルールを守らない!
8月某日近所のスーパーで偶然パパ友と出会った時の話です。
「聞いてくださいよ!うちの息子がゲーム依存なんじゃないか最近心配で」
「へえ〜どのくらいプレイしてるんですか?」
「放っておくとずっとやり続けるし、取り上げると泣き叫ぶんですよ。こっそり布団の中で隠れてやってたり、完全にいたちごっこですよ」
「完全にハマっちゃってますね」
「隠しても見つけてくるし、Wi-Fi切ってもやってるですよ」
「見守りシステムとか使ってないんですか?」
「何でかよくわからないうちに解除されてるんだよね。何ならゲーム機の種類変えて誤魔化してる。本当に困ってて、担任の先生にゲームのことを相談したんですよ」
「先生はどんなアドバイスをしてくれたんですか?」
「『ご家庭でルールを決めてみたらいかがですか?』って言われて、こちらとしてはそれでうまくいったら苦労なんてしない!って話で」
「たしかに具体的なアドバイスではないような気がしますね〜」
「とにかく、このままじゃうちの息子がどんどんゲーム依存症になっちゃうんじゃないかって心配なんですよね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パパ友の話はこんな感じで話していました。
ここで少し【ゲーム依存症】について少し説明をしたいと思います。
ゲーム依存症は医学病名を「ゲーム障害」と言います。
- ゲームに関して自制ができない
- 他の生活上の興味や日常的な活動よりもゲームの優先度が高い
- ゲームによって悪い結果が生じているにも関わらず、ゲームを継続し、またゲームの使用がエスカレートする
以上の①から③が持続的・反復的に見られることがゲーム障害の診断基準となっているそうです。
さて、医学的な背景やパパ友の息子さんは本当にゲーム依存と言えるのかどうかはわかりませんが、教師として、保護者としてできることは「ルールづくり」です。
「だから!それができたら苦労しないんですよ!」
というパパ友の声が聞こえてきそうですが、担任の先生がしてくれた「ご家庭でルールを作ってみたらどうですか?」というアドバイスは的確なんですよね。とはいえどういったルールを作るべきなのかがわからなくて困っているわけですよね。
ではここからルール作りについて具体的に話していきたいと思います。
皆さんは「ルール」と聞いてどんなことをイメージするでしょうか?
『法律や校則のように、上から与えられるもの』
『支配や強制のように、その人の自由を奪うもの』
親御さんは家庭内のルール作りをする時、つい法律を作るようにペナルティーを科したり、強制するようなルールを作りがちです。しかしルールは、みんなができるだけ自由になれるように、お互いの納得の上で作っていくのものです。
私は教師として、担当する児童と共に、日々ルールづくりに励んでいますが、より良いルールとはどうやって作るのでしょうか?
パパ友との話に戻りましょう。
一緒にルールについて語り合います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ちなみに、家庭でゲームをするルールはあるんですか?」
「ゲームは1日1時間って決まりが一応あるんですけどね〜」
「そのルールは誰が決めたんですか?」
「ママと相談して僕らで決めましたね」
「時間に関するルールがあるんですね。1日1時間を破るとどうなるんですか?」
「ゲームを取り上げます」
「どれくらいの期間取り上げるのですか?」
「その時々で違うかな…」
「そもそもなんで1日1時間って決めたんですか?」
「ちょっと前に香川県のゲーム依存症対策条約が話題になったじゃないですか?それを参考にしたんですけど」
「そのルールは息子さんは納得しているんですか?」
「納得してないですね〜『みんなはもっとやってる!』とかいつも言ってますね」
「みんな、って便利な言葉ですよね。じゃあそのルールに抵抗しているんですね?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ゲームのルールづくりはご家庭で」は学校の決まり文句ですが、ルールを作っていくのは難しいですよね。ここで、ルールづくりのポイントを整理していきます。
①「破ると罰則があるルール」から「守るとメリットがあるルール」へ
ルールのイメージが支配・強制であると、ついつい罰則をつけてしまがちです。しかし、罰則をつけるということは、常に「保護者が罰を行うミッション」が発生するということです。日々忙しく過ごす中、お子さんがルールを破ったからといって、罰を与えるのも一苦労。罰を与えたり与えなかったりすると、ルールとしての効力が失われていきます。「ルールを破っても、結構何とかなるな」と学習した子は、どうなるでしょうか?
(例)
「ルールを破ったらゲーム機を取り上げます」
↓
「連絡帳と宿題と○○を提出したら30分、夕食の手伝いをやったら30分ゲームができる」
(短い時間で区切り、学習や食事のリズムを作り出す効果もある。)
「そんなの理想論!甘っちょろいルールをドヤ顔で言われても説得力皆無ですから!」
と怒号が飛んできそうなので、もう少しルールを強化していきましょう。
②TPO(時間・場所・場合)3種類のルール
時間に関するルールはよく作りますが、その他の場所・場合についてはどうでしょうか?現代の小学生において、主流のゲーム機は携帯型。ルールが時間に関するもののみでは不十分です。
(例)
「ゲームは1日1時間!」
↓
「ゲームはリビングでする。充電もリビングでする(充電器固定)」
「友達の家に行くときは、見守りシステムのあるゲーム機を持っていく」
「いきなり押し付けっぽいルールになってきたな!結局ルールは支配・強制か!」
という読者の心の声が聞こえてきましたが、この辺りのバランスはとても難しいですね。
しかし、保護者側の切り札は「ゲーム機を買い与え、インターネット環境を保持している」という強固な事実です。そこのアドバンテージは有効に活用していってください。
③大人の価値観や願いを子供と共有し、両者納得するようなルールを作る
繰り返しになりますが、ルールは大人から子供へ与えるものとは限りません。
子供が進んでルールを守るためには、両者の納得が必要不可欠です。ここは非常に重要です。
「なぜ、こんなにもゲームに関するルールを作りたがっているのか?」
親御さんは再度自分に問いかけてください。その上でお子さんへ想いを伝えて、共にルールを作っていきましょう。「何となくゲームばっかりやってるいると成績が下がりそう!」で小学生時代の自分だったらは納得するでしょうか?
(例)
「こんなルールを作った!守るならゲーム機を買ってやるぞ!」
「うん!守るから買って!(とりあえず言っとこ)」
↓
「平日と休日で、どれくらい時間のゆとりがある?休日は2時間やる時間が取れるかな?」
「週に1日、ゲームしない日を作りたいな。ゲーム依存って病気があってね…」
「ゲームばっかりだと、運動する時間が少なくなっちゃうね。このままだと視力も下がる上に…」
「ゲームも面白いよね。他にも面白いものってある?色々な経験して欲しいから…」
「何だこの教育番組で出てきそうな会話は!子にとってゲームより面白いものなんてそうそうないだろ!」という意見が大多数かと思いますが、むしろお子さんがどんなものに興味を持っているのか、改めて知るきっかけにして欲しいなと思います。子供の興味は決してゲームだけではありません。外で遊んでいる時はゲームのことを忘れて夢中になっていることもありますよね?ただゲームを禁止にするのではなく、ゲームの他に子供が興味のありそうなことや、好きなものを見つけてあげるのも親が出来ることだと思います。
各家庭のお子さんの反応はまさに十人十色。膝を突き合わせて話し合ってみてください。お子さんはどんな返しをしてくるでしょうか?
④ルールを作ったら共有する
作ったルールは、紙に書いて普段ゲームをする場所に貼っておきましょう。
そのためにも、文面はなるべくポジティブな内容がいいですね。
そして大切なことは、保護者の方もお子さんと少しだけゲームをしてみることです。
一緒にゲームをすることによって、ルールの妥当性が強まります。
「ちょっと待って!今セーブするから!」とお子さんに言われたら「セーブなら私がやっておくから一回スリープにしなさい!」と返すようなイメージです。
実際にゲームをやってみると、ゲームが有能なコミュニケーションツールになっていることや、案外に思考力を高める学びになっていることに気づくかもしれません。
ゲームのプラス面とマイナス面を理解してこそ、お子さんへの説得力が増していくことでしょう。
パパ友との会話に戻ります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ルールづくりのポイントは以上なんですが…。ルール、作れそうですか?」
「いや〜実際めんどくさそうだと思った…」
「そうですよね。お子さんと考えるよりも親が作ったルールを守らせた方が早いですものね」
「でも親が作ったルールだと守らないし…。でも怒ってばかりだと疲れちゃうからやってみます」
「トライアンドエラーです。ルールづくりもゲームみたいに楽しんでくださいね。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ゲームをやめさせるためにはどういったルールを作ればいいのだろうか?』
そんな風に考えている親御さんは多いと思います。しかしそのルールはお子さんにとって押し付けになっていないか一回見直しましょう。そして親から一方的に決めたルールではなく、一緒に話し合って子供が納得したルール作りをしてみてください。理想論に聞こえるかもしれませんが、実践してみる価値はあると思います。
(サムネデザイン:コスモオナン)