「問題がないときから気軽にカウンセリングを受けてほしい」話すことで見えてくる自分の気持ち

臨床心理士・公認心理師 古田明子さん

心の専門家に不安や悩みを話し、解決に向けてのサポートをしてもらうカウンセリングは、心に大きなダメージを受けたときに利用するものだと思われがち。そんななか、「何も問題がないときから、自分のことを話す時間として使ってほしい」と話すのが、臨床心理士・公認心理師の古田明子さん。臨床歴25年、面接などの総数2万回以上のベテランで、日々の出来事やマンガの一場面に心理学を組み合わせて書いたブログは、わかりやすくおもしろいと好評です。ブログ発信を始めるまでの経緯や、気軽にカウンセリングを受けてほしいと思っている理由についてお話をうかがいました。

他の人と違うのはなぜだろう?

明子さんが人の心に興味を持ったのは、小学生の頃。「他の人とは考え方や感じ方が違うみたいだ」と自覚したのがきっかけでした。

「気持ちのおもむくままに行動するのではなく、こんなときはどう言ったらいいのかな、この場面ではどう感じるのかなと考える子でした。小学校低学年ぐらいで、『変だぞ、周りの子たちは私と同じようには悩んでいないらしい』と気がつき、なぜ人と違うのかわからないモヤモヤを感じ始めて。中学生になり、モヤモヤと心理学が結びつき、この学問を学べばなぜなのかわかるかもしれないと思いました」

大学で心理学を学んだあと、臨床心理士になるため大学院へ進学。資格を得てクリニックに勤務し、その次の仕事は精神科病院でのアルコール依存症治療でした。ここでの日々が、明子さんの人生に大きな影響を与えます。

「アルコール依存症の患者さんたちが回復に至るまでの過程には、家族と向き合うことが必要です。担当していたのは、ちょうどアダルトチルドレン、機能不全家族といった考え方が治療場面へダイレクトに入ってきた時期。過酷な環境で育った子どもは、周りの人の感情を察しないと生き残っていけなかったなど、患者さんやご家族に対して説明していた内容が、まさに自分の幼少期の体験にも当てはまり、自己理解に繋がりました。何度も説明しながら、父が早くに亡くなってしまったことで、いろいろあった家族との関係を振り返らざるをえなくなったのです」

誰かに話すことで気がついていく

他の人と違う感覚を持っていた理由のひとつが、生育環境にあると気づいた明子さん。患者さんたちの状態が改善し、生き方を変えていく様子を目の当たりにするうちに、自分は何をすべきなのかとの思いにも向き合うことになりました。

「現場で腕を磨きながら、これは天職なのか?本当は何をすべきなのか?と考え続けていました。その間に結婚、出産という転機があり、仕事と家庭と自分の内面とのバランスが取れず、体調を崩しました。そこで、病院を退職することにし、大学のスクールカウンセラーと、カウンセリングルーム「leaf and leaf」の開業へと仕事を変えました」

転機を支えたのは、先輩の臨床心理士さんとの会話。こんなことがあった、こう感じたなど、たわいもないことを話し続けていました。

「何をすべきかの答えは、キラキラしたもののなかにあると思っていたのですよね。誰が見てもピッタリの天職が見つかるとか、ドラマティックな展開がほしかった。でも、日々の出来事を話す、相談する。その積み重ねの方が効きました。こっちが心地いい、こういうことをしたいと気がつけたし、その先には、私の原動力は『かっこいい』と『おもしろい』なのだなとわかる段階が待っていました」

感情に名前をつける

 

大学のカウンセリングルームは落ち着いた雰囲気

スクールカウンセラーとカウンセリングルームの仕事をしながら、仕事の幅をさらに広げるために、国指定資格の公認心理師の資格を取得(臨床心理士は民間資格)。昨年からは、公認心理師のオンライン職能団体として活動している「日本遠隔カウンセリング協会」のスーパーバイザーになり、公認心理師になったばかりの人や目指している人にアドバイスをしたり、コラムを書いたりしています。

「スーパーバイザーという立場も響きも格好いいなと思って。かっこいい私を目指して、要件をクリアするための勉強はしっかりしました。認定されたときや、書いたコラムに一定の反響があったときは嬉しかったです。カウンセリングをオンラインで行うケースも増えてきていますが、日本遠隔カウンセリング協会では10年前から取り組んでいます。早いですよね」

コロナの影響でオンラインカウンセリングが広がっていき、勤務先の大学では、教員が気軽にカウンセリングを受けている状況。学生の敷居も低くなってきているけれど、まだ日常のなかに根付いてはいないと感じているそうです。学生や社会に出た人たちにカウンセリングを勧めるのはなぜなのでしょうか。

「お勧めする理由はいくつかあります。まず、ジャッジされることなく、ありのまま受けとめてもらえる場所を提供できることです。話をさえぎられたり、悩みをないがしろにされたりもしません。そんな雰囲気で話をすると、本当の気持ちに気がつきやすい。また、抱えている感情に名前をつけたら、自分自身で取り扱えるようになりますし、不安や悩みの解決への道筋を見つけながら、自己理解や受容ができるようにサポートしてもらうこともできます」

髪を整えたくなったら、美容院に行ってスッキリする。そのような感覚で、何も問題がなくても、自分のことを話して心をケアする時間をつくってほしいという明子さん。

「自分自身がカウンセリングを受けてきた体験と、現場での感触の両方から、カウンセリングは人を助けてくれると思っています。学生たちには、『自立とは自分で問題を解決できることだと思うかもしれないけれど、相談力が大切。いかに相談が上手になるか、相談先が見つけられるかということでもあるのだよ』と伝えています」

マンガで紹介する心理学

ある日、マンガをちりばめながら婚活エピソードを書いているブログを笑いながら読んだあと、「これ、心理学もマンガで解説したらおもしろいんじゃない?」と自身のブログで試してみることに。

「よく見たら、マンガにはしっかりと表情が描きこんであるのですよね。ストーリーを追っていくだけで、登場人物の感情もわかる優れたツールです。親密な関係が苦手で感情表現が少ない人は、いわゆる心理学の世界でいう『回避型愛着』の傾向があるのですが、『少女マンガの主人公の相手役になることが多いツンデレイケメン』と説明するほうがわかりやすいですよね。ブログを読んでいるうちに、心理学に親しみを持ってくれたらいいなと思っています」

最後に、カウンセリングに興味を持った人に伝えたいことを聞きました。

「生きていくかぎり、不安や悩みはついてきます。でも、カウンセリングを受けたら客観的な視点でとらえることができて、解決への糸口を見つけられやすくなるんじゃないかなと思います。自分の気持ちと向き合う時間が多いほど、日々の小さな欲求に気づいて満たせるようになり、本当の望みに近づいていきます。カウンセリングを受けても受けなくても、自分を大切にしてください」

 

▼古田明子さん ブログ

HSP-高感受性さんのための青空カウンセリング @山梨 leaf and leaf (ameblo.jp)

 

(編集:中村洋太)